スマホゲームのサービス終了で課金アイテムはどうなるか|資金決済法の払い戻しと請求手続き

木目のデスクに置かれたスマートフォンにゲームアプリの『サービス終了』バッジが表示され、隣に『サービス終了のお知らせ』と書かれた通知書類、硬貨、赤丸で印をつけたカレンダーが並んだイメージイラスト

スマホゲームがサービス終了するとき、課金したガチャ石や有償ポイントは資金決済法に基づいて払い戻される場合があります。払い戻しの仕組み、対象外になるケース、供託金制度の限界、実際に払い戻しが行われた実例をまとめました。

遊んでいたスマホゲームに、サービス終了の告知が出た。ガチャを回すために入れていたお金は、このあとどうなるのか。気になって検索する人は少なくないと思います。

この記事で扱うのは、課金を間違えたときの返金ではなく、サービスそのものが終わるときに、法律上どういう仕組みで払い戻しが行われる、あるいは行われないのかという話です。関係する法律は資金決済に関する法律(資金決済法)で、ゲーム内で使う有償のガチャ石やポイントは、この法律が定める前払式支払手段の一種として扱われます。誤って課金してしまった場合の対処はスマホゲームの誤課金は返金できるかにまとめているので、そちらを確認してください。

先に結論を書きます。法律上、発行者にはサービスを終了するときに残高を払い戻す義務があります。ただし、この義務にはいくつもの例外や抜け道があり、実際には払い戻しの案内が出ないまま終わる作品のほうが多いというのが実情です。義務があることと、実際に手元にお金が戻ってくることは、分けて考えておいたほうがいいと思います。

資金決済法第20条が定める払い戻しの義務

資金決済法第20条は、前払式支払手段の発行者が発行業務を廃止するときなどに、保有者へ残高を払い戻す義務を負うと定めています。相続や事業譲渡、合併、会社分割によって発行の権利が別の会社に引き継がれる場合は、この義務の対象から外れます。

払い戻すときには公告が必要です。公告には次の3点を記載することになっています。

  • 払戻しをする旨
  • 60日を下らない一定の期間内に債権の申出をすべきこと
  • 期間内に申出がなければ除斥される旨

関東財務局が実務向けに公開している払戻し手続きについての案内では、周知にあてる期間はおよそ60日、申出を受け付ける期間はおよそ90日を目安にするよう示されています。法律が定める申出期間の下限(60日)より長めに取るのが、実務上の標準ということです。

なお第20条5項では、業務廃止や登録取消しなど第1項各号にあたる場合を除いて、任意に払戻しをすることは原則としてできないとも定められています。ゲーム内通貨がユーザーの都合だけで現金に戻せないのは、この規制があるためです。払戻金額が少額である場合など、内閣府令で例外が定められている規定もありますが、具体的な基準はここでは扱いません。

法律の条文自体はe-Govの資金決済に関する法律で確認できます。

実際に払い戻しが行われた実例

実際にこの第20条に基づいて払い戻しが行われた例を挙げます。

Cygamesの「Shadowverse」は、未使用クリスタルのうち有償発行分を対象に、2026年7月1日11:00から10月1日10:59まで払い戻しの申請を受け付けています。アプリ内のフォームから申請すると、後日届くフォームに口座情報を入力する流れで、振込は国内口座のみ、振込手数料は会社負担です。告知には「資金決済に関する法律第二十条第一項に基づき」という文言がそのまま書かれています(Shadowverse公式のお知らせより)。

NetEase Gamesの「ネバーアフター〜逆転メルヘン〜」は2025年1月20日付けで公告を出し、翌21日から4月21日までの約90日間、有償発行分のダイヤモンドについてメールでの申出を受け付けました。申出のあとは、銀行振込申込みフォームで手続きを進める形です(公式のお知らせより)。

MIXIの「モンソニ!」も、有償発行分のオーブを対象にした払い戻しを2026年9月15日15:00から12月15日23:59までの期間で案内しています(払戻公告のPDFより)。

3例とも、対象を有償で発行された分に限っている点が共通しています。理由は次の章で説明します。

なお、現在進行形で払い戻しが予告されている例として、FF7エバークライシスが10月7日終了、無課金で全ストーリーは見られるかで扱っている作品があります。この記事を書いている時点では、正式な受付は始まっていません。

無償で配られたポイントは対象外

前払式支払手段として資金決済法の対象になるのは、対価を得て発行されたものに限られます。ログインボーナスや配布キャンペーンで無償にもらったガチャ石やポイントは、この法律が定める払い戻し義務の対象になりません。

上に挙げた3例の告知も、いずれも対象を有償発行分に限ると明記しています。同じ通貨の残高でも、有償で買った分と無償でもらった分は、法律上は別物として扱われるということです。

払い戻しの案内が一切出ないまま終わる作品も多い

実際には、払い戻しの案内が出ないまま配信が終わる作品のほうが多いというのが実感に近いと思います。理由はいくつか考えられます。

一つは、ゲーム内通貨の設計そのものが、資金決済法の対象外になっている可能性です。資金決済法施行令第4条2項により、発行から6か月以内に限り使用できる前払式支払手段は、供託義務や払戻し義務を含む資金決済法第二章の規定そのものが適用除外になります(施行令はこちら)。利用規約でガチャ石やポイントの有効期間を「発行から6か月」のように設計している場合、そもそも法律の対象外になりうるという整理です。

ただし、これは単純な話ではありません。実際の規約では「6か月ごとに自動更新され、実質的には無期限に近い形で運用されている」場合もあります。この場合に除外規定に当たるかどうかはグレーで、断定はできません。

スマートフォンゲームに限って言えば、もう一つ実務上のハードルもあります。AppleのApp Store Review Guidelines(3.1.1)は、アプリ内課金で購入したクレジットやゲーム内通貨について「有効期限を設定してはならない」と定めています。iOS版を配信する以上、有償で買った分の通貨に「発行から6か月で失効する」という設計を持ち込むのは審査基準に抵触しかねません。iOSとAndroidの両方で展開する作品が大半である以上、この適用除外を狙って有効期限を短く設計する余地は、実際にはそれほど広くないと考えられます。

もう一つ、供託義務(第14条)と混同しないよう触れておきます。供託義務は、基準日(毎年3月31日・9月30日)時点の未使用残高の合計が1,000万円を超える場合にのみ生じるものです。この基準を下回れば供託の義務はありませんが、これはあくまで供託についての話であり、業務を廃止するときの払戻し義務(第20条)そのものを免除する規定ではありません。「うちの規模では対象外」という理由で払い戻しの案内が出ないのだとしたら、それは法律の建て付けとは違う話になります。

実際に、当サイトで扱った神の契約は、両ストアから配信が取り下げられるまで、運営からの終了告知自体を確認できませんでした。払い戻しの案内があったかどうかも、当サイトでは確認できていません。法律上の義務があるかどうかにかかわらず、告知が出なければ利用者の側から手続きのしようがない、というのが実情です。

サービスが終了に向かっているかどうかの見分け方は、長く続いているスマホゲームで公式のお知らせを確認する方法をまとめています。払い戻しの有無を知る手がかりも、結局はそこに行き着きます。

運営がお金を用意できない場合に備える供託金制度

払い戻す義務があっても、発行者の手元にお金が残っていなければ払えません。この場合に備えて、資金決済法は発行保証金(供託金)の制度を用意しています。

第14条により、基準日時点の未使用残高が1,000万円を超える発行者は、その2分の1以上を供託所に供託する義務を負います。日本資金決済業協会の説明ページにも、発行保証金は未使用残高の2分の1以上と明記されています。

つまり、この制度があっても保護されるのは残高の全額ではなく、多くても半分程度にとどまります。発行者が自力で払い戻せない事態になった場合、利用者は権利実行の手続き(第31条)を通じて供託金からの還付を求めることが制度としては用意されており、この権利は他の一般債権者に先立って弁済を受けられる優先権として定められています(第31条1項)。ただし、優先権があることと、そもそも供託された金額が残高を十分にまかなえるかは別の話です。この手続きが実際に使われて利用者に還付された具体例も、当サイトでは確認できていません。制度として存在することと、実際に機能するかどうかは分けて考えておく必要があります。

破産で運営自体がいなくなったケース

もっと厳しいのが、発行者が破産してしまう場合です。実例として、当サイトで扱っているロードオブヒーローズがあります。

運営元のClover Games(韓国)は2026年4月9日、韓国の裁判所に法人破産手続開始の申立てを行い、5月9日からサービスが段階的に終了しました。通常のサービス終了であれば数か月前に告知が出て、その間に払い戻しの手続きが案内されるところですが、破産の場合はその前提が崩れます。

運営はこのとき、自社では払い戻しに応じられないという趣旨の案内を出し、代わりにApp Store・Google Play・ONE Storeの各窓口へ直接申請するよう呼びかけました(AUTOMATON、gamebizによる)。

ここで注意が必要なのは、このプラットフォームへの申請呼びかけは、資金決済法上の権利ではないという点です。AppleやGoogleが自社の返金ポリシーに基づいて個別に判断し、応じることがある任意の対応であり、法律が定める払い戻し義務とは根拠が別物です。発行者そのものが消えてしまえば、資金決済法の枠組みでの請求先がなくなり、頼れるのはプラットフォーム側の裁量だけになります。

App StoreとGoogle Playの返金は別の制度

ここまで書いてきた資金決済法の払い戻しは、運営(発行者)に対する請求です。これとは別に、App StoreとGoogle Playにも、購入したアプリ内アイテムの返金を申請できる仕組みがあります。

Appleはreportaproblem.apple.comから返金をリクエストできます。Google Playは購入から48時間以内ならセルフヘルプで返金申請ができ、48時間を過ぎるとデベロッパーへの問い合わせが基本になります(参考: Google Playのヘルプ)。どちらも申請すれば必ず通るものではなく、内容を見て個別に判断される点は、ロードオブヒーローズの例と同じです。

申請の具体的な手順や、未成年者が課金した場合の対処はスマホゲームの誤課金は返金できるかに詳しくまとめています。サービス終了の場面でも窓口は同じなので、あわせて確認してください。

購入履歴は、アプリが削除されたりストアから消えたりしたあとでも、アカウント側に残ります。Appleはreportaproblem.apple.comでサインインすれば確認でき、Google Playは「お支払いと定期購入」の「予算と履歴」、またはこの確認ページから確認できます。

今からできること

サービス終了の告知が出てから慌てないために、できることを整理します。

  • 告知が出たら、まず払い戻しの案内があるかどうかを確認する。案内がなければ、無償発行分だけだったのか、運営が案内を出していないだけなのかを見分ける手立てはない
  • Apple ID・Googleアカウントの購入履歴は、アプリが消える前に一度確認しておく
  • 有償で買った分と無償でもらった分では法律上の扱いが違うことを理解しておく。無償ポイントは基本的に対象外
  • 正直に言うと、払い戻しの案内が出ないまま終わる作品のほうが多いのが実情。義務があることと、実際に戻ってくることは別だと考えておく

まとめ

  • 資金決済法第20条により、発行者はサービス(発行業務)を廃止するとき、保有者へ残高を払い戻す義務を負う
  • 払戻しには公告が必要で、財務局は周知60日・申出期間90日程度を実務の目安として示している
  • Shadowverse、ネバーアフター、モンソニ!は、実際にこの規定に基づいて払い戻しを実施・案内した実例
  • 発行から6か月以内に限り使える設計の通貨は、施行令により資金決済法の対象外になりうる。ただし実際の運用次第でグレーになる場合もある
  • 無償で配られたポイント・ガチャ石は、有償発行分と違い払戻し義務の対象外
  • 発行者が自力で払えない場合に備えた供託金制度もあるが、保護されるのは残高の最大でも半分程度
  • ロードオブヒーローズのように運営が破産した場合、プラットフォームへの返金呼びかけは資金決済法上の権利ではなく、Apple・Googleの任意の対応
  • 払い戻しの案内が一切出ないまま終わる作品も少なくない。義務があることと、実際に戻ってくることは別の話

サービス終了の告知を見たら、まず払い戻しの案内があるかどうかを確認してください。案内が出ないまま終わる作品のほうが多いという前提で、期待しすぎずに構えておくのが現実的です。

ゲームバイブル編集部

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